あれから、2週間。
そろそろ本当の、事を書きたいと思う。
あの日、部活を終えると、一通のメールが届いていた。
送信者は、タケ。
今、時間ある?とだけ書かれたメールだった。
その時点で、もうダメだって思った。
今は学校にいることを伝えた。
家についたら連絡して欲しいと言われたけれど、気になって。
なんども電話をかけた。
出て貰えなかった。
メールの返事は返ってくるのに。
あの日、どんな風に家まで帰ったのか、まったく覚えていない。
うちに帰って、着いた、とタケにメールした。
しばらくして返ってきたメールには
別れたい、と書かれていた。
やっぱり、と
心の何処かでそう思って。
どうして?と
それしか言葉は思いつかなくて。
タケには2ヶ月前から向こうに彼女がいたらしい。
二股、ってやつ。
電話がしたいと思った。
声が聞きたいし、直接伝えたいことがあったから。
だけど、いくらかけても出て貰えなくて。
どうしたらいいか解らなかった。
突然の拒絶に頭も心もついて行けなくて。
泣かせるのが辛いから、電話はできないとタケは言った。
泣いたら切っていいから、電話がしたいと私は言った。
タケから、電話がかかってきた。
頑張って明るい声を出そうとした。
涙は流れているのに声は笑っていて。
タケは、暗い声だったと思う。
何を話したのかはいまいち覚えていない。
ただ、一つだけはっきり覚えているのは
電話の向こう側から聞こえた彼女の声。
聞こえた瞬間に、別れたってことが
いきなり現実味を帯びてきて。
頭が痛かった。
ありがとう、と伝えられたから。
よかったとは思うけれど。
次の日、部活に行ってその話をした。
みんな、慰めてくれた。
あんな男、忘れてしまえと言われた。
一日中泣きっぱなしだったあたしのそばにいてくれて
何も言わずに頭を撫でてくれたのは幸子。
いつも通りふざけて、笑わせてくれたのは田代。
一生懸命一つ一つ言葉を選んで慰めてくれたのはリナ。
タケのしたことに対して真面目に腹を立ててくれたのは隆介。
いつ電話をしても文句一つ言わないで
アタシの愚痴をいつまでだって聞いていてくれたのはメグミ。
他にも、イロイロ。
みんないろんな形で慰めてくれて。
本当に、嬉しかった。
ありがとう。
それから、1週間のお盆休みに入った。
毎日部活が無くて。
何もすることが無くて。
どうしたらいいか解らなくて。
夜が来るのが怖かった。
受話器越しに聞こえた彼女の声が
どうやっても耳について離れなくて。
寝ようとするとその声ばかり頭に響いて。
今、タケはその彼女と一緒にいるんだと思うと
全然眠れなくて。
毎日、泣き疲れて眠るしかなかった。
そんな風に。
昼も夜も、ただ毎日息を潜めて
1日1日が過ぎるのをじっと待っていた。
早く、忙しくなりたかった。
そして、部活が再開して、
毎日が忙しくなって、
タケのことも
少しだけ思い出になったとき、
その日はやってきた。
花火大会。
前からあたしが行きたいって言っていて
別れたときの電話でも
行きたいって言った花火大会。
その時のタケの返事は
『考えとく。』 それだけ。
どうして良いか解らなくて。
はっきり言って行きたくなかった。
行って、また傷ついてしまったら。
そう考えると怖くて仕方が無くて。
さんざん悩んだあげくメールを送った。
返事が、返ってこなくてもいいや、と思った。
むしろ、返ってこない方が…とも思った。
けれども、きちんと返事は返ってきて。
二人で、花火大会に行った。
付き合ってた時みたいに手を繋いで歩いた。
すごく、すごく、幸せだった。
誰かの隣にいることがこんなにも心地良いものだったんだと
改めて思った。
その日。
あたしは、もう泣かないと決めていたし。
タケにも泣くな、と言われた。
だけど、
今、隣にいても、アタシはもうこの人の彼女じゃないんなだなーとか
いろんなことを思っていたらまた泣いてしまった。
最後まで、泣いてばかりで。
いつもいつも、わがままばっかり。
すぐ怒るし、すねるし。
不安になりすぎてるし、束縛しすぎ。
しつこいし、意味不明だし。
何も、タケにあげることができなかった。
あたしは最低な彼女だったと思う。
あたしは、タケのことがすごくすごく好きで。
タケも、好きだと言ってくれて。
沢山、いろんな物をくれて。
いろんな場面で支えてくれて。
わがままも聞いてくれたから。
甘えすぎてしまったんだ。
ごめんなさい、ごめんなさい、ありがとう。
今更後悔しても遅いけど。
もしも、もう一度つきあえたら、今度はもっとマシになる努力をしようと思う。
そんなこと、あり得ないけど。
この2週間、何度も何度も頭の中でタケを呪った
死んでしまえばいいのにと思った。
彼女に、振られてしまえばいいのにとも思った。
でも、そんなことを思っても
みんながタケのことを罵るのを聞いていても
キライになることはできなかった。
やり場のない気持ちはどうすることもできなくて。
余計なことは考えないようにつとめた。
でも、目を背けているのも限界で。
そんで、思った。
というか、思い始めた。
無理矢理キライになることはないのかなァ…と。
好きでいて貰うことは無理でも
好きでいることは自由なのだから
きっとあたしはこれからもタケの事が好きだと思う。
もう、一緒に幸せになることは無理だと思うけれど
せめて、彼の幸せを心から願うことができるようになりたい。
そして、今度会うときはは笑って逢えるように。
涙なんか見せないようになれたらいいなァ…と思う。
彼と過ごした時は間違いなくあたしが今まで生きてきた中で最高に幸せだったと思う
だから、出会ったことを後悔してはいない。
沢山の思い出をありがとう。
沢山の幸せをありがとう。
誰かのことをこんなに愛しく思うのは初めてでした。
本当に、ありがとう。
さようなら。